【支援事例】 AppSheet とGoogleドライブ連携でファイル管理を内製化

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弊社(アプリスイート)が支援した AppSheet (アップシート) 導入事例の紹介です。この事例では、従業員約100名の専門・技術サービス業(研究開発)A社において、3ヶ月間の内製化支援により発注案件の証憑管理システムをAppSheetで開発しました。発注案件別に見積書、発注書、納品書、請求書等の証憑ファイルを収集・管理できるシステムを実現し、Googleドライブによる一元管理を構築しました。

システム構築においては、費用区分別・発注案件別にフォルダ管理を行い、証憑ファイルの散在問題を根本的に解決しました。担当者の方は自学自習でAppSheetの基礎を習得し、内製化支援によるスキルアップを同時に進めるハイブリッド・アプローチを採用しました。その結果、3ヶ月という短期間で実用的なシステムの構築と継続的な改善体制の確立を両立しました。

💡この事例のポイント💡

  1. 3ヶ月の内製化支援により発注案件の証憑ファイル収集・管理システムを構築
  2. 非エンジニアの担当者でも自立して継続的な改善体制を確立
  3. Slack連携による通知システムとダッシュボードで証憑収集業務を効率化

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1. 事例概要

A社は研究開発を主要事業とする専門・技術サービス業で、多数のプロジェクトを並行して進行しています。各プロジェクトでは発注先との間で多数の証憑ファイル(見積書、発注書、納品書、請求書等)のやり取りが発生し、これらの管理と収集状況の把握が重要な業務となっています。

事例概要

項目 内容
業種 専門・技術サービス業(研究開発)
社員数 約100名
アプリ種別 案件管理、ファイル管理
背景 案件別に証憑ファイル(見積書、発注書、納品書、請求書等)を収集し、収集状況をステータス管理したかった。
AppSheet でやりたいこと
  • 案件別に、Googleドライブにフォルダを作成して、証憑ファイルをまとめておきたい
  • 収集状況をステータス管理し、不備があればSlackで通知して、修正依頼したい
  • 自分の担当案件やタスクをダッシュボードで一覧できるようしたい
契約内容 内製化支援プラン(GAS開発を含む)
開発期間 3ヶ月
開発範囲 狭 ★★☆ 広
開発難易度 低 ★★★☆☆ 高
運用難易度 低 ★★★★☆ 高

2. AppSheet を選定した理由

A社では証憑管理システムの構築において、要件定義からMVP(最小実行可能製品)開発、リリースまでを短期間で実現したいという明確なニーズがありました。従来のシステム開発手法では長期間を要する開発プロセスを、AppSheetの活用により大幅に短縮できる点が最大の選定理由となりました。

2-1. 既存業務の課題

A社の証憑管理では、見積書、発注書、納品書、請求書等の証憑ファイルが複数のクラウドサービスに分散して作成・保管されている状況でした。担当者はこれらの各クラウドサービスを定期的に見回り、必要な証憑ファイルを収集してGoogleドライブに集約する運用を行っていました。

しかし、この手作業による収集・集約プロセスには多くの課題がありました。複数のサービス間を移動しながらファイルを特定し、適切な命名規則で保存する作業は非常に手間がかかり、作業手順も複雑で習熟に時間を要していました。また、証憑の不備があった場合の修正依頼や追跡管理が体系化されておらず、遅延の原因となっていました。

2-2. AppSheet 選定の決め手

Googleドライブ連携による一元管理

A社では既にGoogle Workspaceを活用しており、AppSheetとGoogleドライブの緊密な連携機能が証憑管理の課題解決に活用できると考えていました。案件別にGoogleドライブフォルダを作成し、すべての証憑ファイルを一元管理できることで、ファイルの散在問題を根本的に解決できる点が重要でした。

内製化支援による継続的改善

A社では、業務アプリ開発について要件定義から本番リリースまでスピーディーに進めたいニーズがあり、さらにアプリ使用中にニーズに応じて仕様変更していくことを想定していました。内製化支援プランにより、自社で継続的にアプリを改善できる体制を構築できることが重要な選定理由となりました。

3. AppSheet でやりたかったこと

3-1. AppSheet で実現したこと

証憑ファイルの一元管理システム

A社の最大の課題であった発注案件別の証憑ファイル管理を効率化するため、AppSheetのAutomation機能からGoogle Apps Script(GAS)を呼び出すことで、Googleドライブとの連携システムを構築しました。発注案件ごとに必要な証憑ファイル(見積書、発注書、納品書、請求書、振込受付書など)を体系的に管理できるシステムとなっています。

重要な機能として、証憑ファイルを追加した際にAutomationが起動し、GASが発注案件フォルダを自動作成してファイルを適切な場所に保存する仕組みを実装しました。命名ルールに基づいてファイル名を自動変更し、AppSheetからGoogleドライブファイルへ直接アクセスできる環境を整備しました。

発注案件別にフォルダが自動作成されて(画面左)、その中に証憑が保存される(画面右、以下、ダミーデータ使用)。

 

案件フォルダボタンをクリックすると、発注案件フォルダが開いて、アプリからGoogleドライブにアクセスできる。

 

証憑収集状況の管理とステータス表示

各発注案件について、必要な証憑ファイルがすべて収集されているかを数値化して可視化する機能を実装しました。証憑の収集状況を定量的に把握できることで、担当者は案件全体の進捗を一目で確認できるようになっています。

証憑収集の進捗状況を数値化して、可視化した。

 

システムの使いやすさを向上させるため、社内の証憑番号ルール(1:仕様書、2:見積書、3:発注書...)に合わせて証憑リストのソート順を調整したほか、同じ種類の証憑を複数回アップロードできる機能も実装しています。

また、Looker Studioを活用した高度な可視化機能を構築しました。証憑収集状況については月別と任意の期間での表示が可能で、発注案件の総額や費用区分別合計額も任意の期間で分析できる環境を整備しています。これにより、担当者は各案件がどの段階にあるのかを明確に把握でき、データに基づく効率的な業務管理が実現されています。

Looker Studio で証憑収集状況を費用区分別、ステータス別で可視化した。

 

ダッシュボード機能と作業依頼システム

証憑ファイルに不備や不足があった場合に、発注担当者へ効率的に修正依頼を行うため、Slackを活用した通知システムを構築しました。証憑管理の担当者が不備を発見した際、Automationを使用して専用チャンネルにメンション付きで通知が送信される仕組みを実装しています。

Slack通知には案件情報(発注Noや発注名)と依頼内容に加えて、証憑管理アプリのディープリンクも含まれています。これにより、通知を受け取った発注担当者は、Slackから直接アプリにアクセスして作業進捗を報告できる効率的なワークフローが実現されています。

個人別のダッシュボード機能では、各担当者が自分に割り当てられた作業依頼をタスクとして一覧表示できるよう設計しました。未完了のタスクがダッシュボードに表示されるため、担当者は優先的に対応すべき業務を迅速に把握でき、証憑収集業務の進捗管理が大幅に改善されています。

Slackに専用チャンネルを用意し、担当者への修正依頼をメンション付きで通知する。ディープリンクを設置し、Slackから案件詳細へアクセスできる。

 

担当者は、ダッシュボードから依頼されたタスクや担当案件、ブックマークを一覧表示できる。

 

4. 内製化支援における指導内容

段階的な開発アプローチ

A社側で、開発プロジェクト開始時にある程度の範囲、期間、課題が整理されており、要件定義ができていました。アプリスイートでは、このような状況を踏まえて効率的な開発アプローチを提案しました。

開発戦略として、まず必須機能の実装から着手することを決定しました。開発課題については難易度と重要度で重み付けを行い、優先度の高い機能から順次実装していく方針で3ヶ月の開発スケジュールを策定しました。この段階的なアプローチにより、早期にMVP(最小実行可能製品)をリリースし、実際の業務で使いながら改善を重ねることができました。

内製化支援において、技術的に難易度が高い課題についてはアプリスイートが開発を担当しました。主にGASを使用した機能実装について、証憑ファイル名の自動変更機能や案件フォルダの自動作成・ファイル保存機能など、高度な技術要素を含む部分をアプリスイートが担当することで、A社が継続的にシステムを改善・拡張できる技術基盤を構築しました。

5. 導入効果

5-1. 業務効率化の実現

複数のクラウドサービスに分散していた証憑ファイルを、 AppSheet とGoogleドライブの連携により一元管理できるようになりました。従来は担当者が各サービスを見回りして手作業でファイルを収集・集約していた煩雑な業務が、Automation機能とGASによる自動化により大幅に効率化されました。発注案件フォルダの自動作成やファイル名の自動変更により、手作業でのファイル整理作業が削減されました。

証憑収集状況の数値化により、各案件について必要な証憑がすべて揃っているかを定量的に把握できるようになり、収集漏れのリスクが大幅に軽減されました。Looker Studioによる可視化機能では、月別や任意期間での証憑収集状況、発注案件総額や費用区分別合計額の分析が可能となり、データに基づく効率的な業務管理が実現されています。

Slack連携による作業依頼システムでは、証憑の不備発見時にAutomationを使用して発注担当者へ即座に通知され、ディープリンクにより直接アプリから進捗報告ができる効率的なワークフローが構築されました。個人別ダッシュボードにより、担当者は未完了タスクを迅速に把握でき、証憑収集業務全体の進捗管理が大幅に改善されています。

5-2. 事例から得られた学び

内製化支援による継続的改善体制の確立

担当者の方はデータベース開発やコーディングについては未経験でしたが、詳細な業務フロー図を作成できるなど業務分析力に長けていました。この特性を活かし、AppSheetの基礎は自習により習得してもらい、並行して内製化支援プランで機能実装を進める方針を採用しました。

3ヶ月間の内製化支援は、月2回の1on1技術相談とアプリQ&Aを基本として進行しました。技術相談では手順だけでなく、機能実現の背景や実装方法をスクリーンショット付きで詳細に解説することで、深い理解を促進しました。この結果、開発スケジュールはほぼ予定通りに進行し、テストリリース後は担当者が独力で改修を行えるようになっています。

非エンジニアでも業務分析力があればできる

現在もアプリは継続的に改善・進化を続けており、内製化支援で開発した機能を現場の実情に合わせて選択的に実装しています。このような柔軟な運用により、システムは実用性を保ちながら成長し続けています。

この事例から得られた重要な学びは、内製化成功の鍵は技術的なバックグラウンドよりも業務理解力にあるということです。A社の担当者の方は非エンジニアですが、業務分析力と現場への深い洞察により実用性の高いシステムを構築し、長期的に活用され続ける内製化アプリの成功要因となっています。

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