Google が提供するノーコード開発プラットフォーム「 AppSheet (アップシート)」の基礎的な解説シリーズです。
AppSheetは、さまざまな業界や用途で活用されています。第5回は、 QRコード を使用した 備品管理 の活用事例を紹介します。
この記事は、これから情報を集めて検討しようとしている企業の担当者様向けに、初歩から解説しています。
現場主導の業務改善、ノーコード開発、Google Workspaceと連携したデータ活用やDX推進に関心がある方は、是非参考にしてください。
1. 備品管理 が非効率になる理由
エクセルで備品台帳を作成して、貸出管理や棚卸を紙で行っている場合、備品数が多くなるほど、手間とミスの割合が大きくなり、デメリットが大きくなります。以下のような理由で、紙とエクセルによる備品管理が非効率になります。
最新情報が一覧できない
紙とエクセルによる備品管理では、備品台帳と備品に関連する履歴を紐付けることができないため、備品の最新状態を可視化して、一覧することができません。具体的には、
- 貸出履歴と紐付いていないため、現在、誰がどこで使用しているのか、いつ返却されるのかが分からない
- 備品のステータスが備品台帳に反映されないので、最新のステータスが分からない
そのため、必要な備品の最新状態が把握しにくく、管理者が備品管理にかかる手間と時間が余計にかかることになります。
棚卸に時間がかかる
棚卸を紙で行っている場合、備品のシリアル番号を紙にメモして、エクセルの備品台帳と突合する必要があります。シリアル番号の記載ミスや、備品台帳のシリアル番号を照合する手間と時間がかかるため、棚卸作業に時間がかかります。備品数が多くなれば多くなるほど、半日がかり、あるいは一日がかりで棚卸作業をすることがあります。
データの整合性が保てない
複数の担当者が同じ備品台帳ファイルを更新すると、データの整合性が保てなくなるため、データの信頼性に問題があります。具体的には、複数の担当者が同じ備品を同時に更新すると、備品のステータスが最新状態なのか分からなくなります。備品のステータスを把握するために、現物を探すなど、手間と時間がかかる可能性があります。
2. AppSheet と QRコードで 備品管理 を効率化する
紙とエクセルで行う備品管理は、非効率な面が多く、管理者の負担を増やしています。AppSheetとQRコードを活用することで、備品管理を効率化することができます。
QRコードで 備品管理 ができる
AppSheetには、QRコードやバーコードを読み取る機能があります。具体的には、備品台帳に備品を追加したときに、備品管理番号をQRコードにして、備品に貼り付けます。貸出、返却、棚卸の際に、備品に貼り付けられたQRコードをスキャンすることで、備品を引き当てることができます。これにより、入力の手間が省けるだけでなく、入力ミスも防ぐことができます。
備品の最新状態を可視化して、一覧できる
AppSheetとQRコードを活用することで、備品の最新状態を可視化して、一覧することができます。具体的には、備品台帳と貸出履歴を紐付けることで、誰がどこで使用しているのか、いつ返却されるのか、一目で分かるようにすることができます。また、管理者が備品のステータスを変更した際にも、備品台帳に反映されるため、備品の最新状態を常に把握することができます。これにより、以下のようなメリットがあります。
- 備品の在庫状況や貸出状況をリアルタイムで確認できるため、適切な管理を行うことができる
- 紛失や盗難などのリスクを低減することができる
- 備品の有効活用を図ることができる
マルチデバイスで 備品管理 ができる
AppSheetとQRコードを活用することで、備品管理をマルチデバイスで行うことができます。具体的には、以下のように使用します。
- ユーザーのスマホで備品のQRコードを読み取って、貸出や返却を行う
- ユーザーは、PC(デスクトップモード)で備品の最新情報を一覧表示できるので、希望の備品が貸出可能か簡単に分かる
- 管理者は、備品台帳の登録やステータスの更新など通常の管理業務をPCで行い、棚卸でスマホやタブレットを使用する
- 備品台帳に備品を追加する時に、現物の写真を撮って添付することができる
ユーザーは、いつでもどこでも、自分のデバイスから備品の最新情報を確認することができて、管理者は、デバイスに合わせて業務を効率化することができます。
3. 備品管理アプリの設計
AppSheetによる備品管理アプリの設計は、以下のようになります。
- 備品台帳と社員マスタを用意する
- 貸出履歴に、備品台帳と社員マスタを関連付ける
- 棚卸履歴に、備品台帳を関連付ける
備品管理アプリの使用法は以下のようになります。
- 備品台帳に備品を追加した時に、QRコードを発行して備品に貼り付ける
- 備品を貸出、返却する時にQRコードをスキャンして、貸出履歴を追加、更新する
- 棚卸の時に、QRコードをスキャンして、備品台帳と突合する
QRコードは、備品についているユニークな管理番号です。AppSheetのUNIQUEID関数を使用すれば、備品ごとにユニークな管理番号を生成できます。QRコードはラベル用紙などに印刷して、備品に貼り付けます。ただし、AppSheet単体ではQRコードの大量生産はできないので、有料アドオンの利用も検討します。
4. AppSheet の導入効果
QRコードで管理工数削減
AppSheetとQRコードを活用することで、備品管理にかかる工数を削減できます。貸出、返却の際には、QRコードをスキャンするだけで備品を引き当てることができるので、入力の手間が省けて、ミスを防止できます。棚卸の際には、備品のシリアル番号をメモしたり、備品台帳のシリアル番号と突合する時間と手間を大幅に削減できます。これにより、備品管理業務の効率化ができます。
備品の最新情報を一覧可視化
備品管理アプリで、備品台帳と貸出履歴、棚卸履歴を紐付けることで、備品の最新状態を可視化、一覧できるようになります。ユーザーは必要な備品が貸出可能か一目で分かるようになり、業務の効率化につながります。管理者は備品の最新状態を一覧で把握できるようになり、備品の管理をより適切に行えるようになります。
以上、AppSheetを活用することで、備品管理の非効率な面を解決し、効率化を図ることができます。AppSheetとQRコードを活用することで、貸出、返却、棚卸の作業にかかる手間と時間を大幅に削減し、ミスを防ぐことができます。また、備品台帳と貸出履歴、棚卸履歴を紐付けることで、備品の最新状態を可視化、一覧できるようになり、備品の適切な管理と有効活用を図ることができます。
- 第1回 特徴、メリット、料金を解説
- 第2回 AppSheetでできること
- 第3回 AppSheet活用事例(1)設備保全管理
- 第4回 AppSheet活用事例(2)問い合わせ管理
- 第5回 AppSheet活用事例(3)QRコードで備品管理
- 第6回 セキュリティとガバナンス