AppSheet (アップシート) とは ? | 特徴、メリット、料金を解説

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Google が提供するノーコード開発プラットフォーム「 AppSheet (アップシート)」の基礎的な解説シリーズです。
第1回は、「AppSheet とは ?」をテーマに、その特徴、メリット、料金と簡単なアプリ事例を紹介します。
この記事は、これから情報を集めて検討しようとしている企業の担当者様向けに、初歩から解説しています。
現場主導の業務改善、ノーコード開発、Google Workspaceと連携したデータ活用やDX推進に関心がある方は、是非参考にしてください。

1. AppSheet とは ?

ノーコード開発 とは 〜 市民開発者に最適なプラットフォーム 〜

AppSheetは、誰でも簡単にアプリを作成できるノーコード開発プラットフォームです。

ノーコード開発 とは 、プログラミングの知識やスキルがなくても、アプリケーションやWebサービスを開発できる方法です。近年、ノーコード開発の注目が高まり、さまざまなツールやサービスが提供されています。

ノーコード開発の登場により、システム開発のあり方が大きく変わろうとしています。従来のシステム開発は一部のIT専門家が担ってきましたが、ノーコード開発であれば、プログラミングの知識やスキルがなくても、現場の業務担当者がアプリを開発できるようになります。

このような現場の業務担当者のことを「市民開発者」と呼びます。市民開発者であれば、自分の業務課題を熟知しているため、必要な機能を的確にアプリに反映することができます。また、現場の状況に応じて、アプリをスピーディーに修正や改善を行うことができます。

以上より、AppSheetは、市民開発者に最適な開発プラットフォームと言えます。AppSheetを使えば、現場の業務担当者が、自分の手で業務改善、効率化し、新たな価値を生み出すことができます。

直感的な操作でアプリを作成できる

AppSheetは、プログラミング言語やデータベース言語を書かずに、エディタ画面で設定するだけで誰でも簡単にアプリを作成することができます。

AppSheetのエディタ画面。右側にあるプレビューで確認しながら作業を進める。

 

プルダウンやボタンクリックで選んだり、ドラッグ&ドロップで要素を並べ替えることで、アプリの基本機能を作成していきます。

プルダウンやクリックで項目を選ぶ。
ドラッグ&ドロップで項目の順序を並べ替える。

 

たとえば、請求書作成アプリを作成する場合、取引先の名前や住所などのデータを入力するフォーム画面や、商品マスタの情報を一覧する画面などを、数クリックで作成することができます。

入力フォーム画面は、自動で作成される。
表示したいデータに合わせて一覧画面を数クリックで作成できる。

 

アプリの画面は、あらかじめ用意されたテンプレートから選択して作成することができます。テンプレートには、さまざまな業種や用途のアプリに対応したものが用意されているため、自分の用途に合ったテンプレートを選ぶだけで、簡単にアプリの画面を作成することができます。

タスクをカレンダー表示する。
観光地情報をマップで表示する。
平面図で点検箇所をピンで表示する。

 

作成したアプリは、iOS、Android、PCのいずれの端末でも動作し、利用できます。しかも、一つのアプリで、スマホ、タブレット、PC用の画面を自動的に作成してくれるため、デバイスごとに画面を設計する必要がありません。

タスク管理アプリのスマホ用の画面。
同じく、タスク管理アプリのタブレット用の画面。カンバンボードを表示できるようになる。
同じく、タスク管理アプリのPC用(デスクトップモード)の画面で入力フォームを表示する。

2. AppSheetのメリット

AppSheetは、プログラミングの知識やスキルがなくても、直感的な操作でアプリを作成できるノーコード開発プラットフォームです。それ以外にも、以下の3つのメリットがあると考えられます。

  • コストを抑えてアプリを作成できる
  • 短時間でアプリを作成して現場に投入できる
  • データベースや外部サービスと連携できる

コストを抑えてアプリを作成できる

AppSheetは、クラウドサービスとして提供されているため、初期費用を抑えてアプリ開発を始められます。

AppSheetは、Google アカウントがあれば無料で始められます。無料プランでは、共有できるユーザー数や機能に制限がありますが、個人で利用するには十分です。

商用や組織での利用では、Google Workspace の Businessエディションや Enterpriseエディションを契約していれば、AppSheet Core ライセンスを追加料金なしで利用できます。AppSheet Core ライセンスなら、ユーザー数や機能に制限がなくなります。

AppSheet Coreライセンスは、Google Workspaceに含まれている。

 

従来のアプリ開発では、開発環境を整える必要があります。これには、ソフトウェアのインストールや設定、サーバーの用意など、時間とコストがかかります。しかし、AppSheetはクラウド開発環境を利用するためセットアップ不要で、ChromeなどのWebブラウザですぐに開発を始めることができます。

手持ちのGoogleアカウントでサインインするだけで、すぐに始められる。

 

最後に、現場の業務担当者が開発することで、社内にエンジニアを配置する必要がなくなり、人件費を削減することができます。現場の業務担当者が、自分の業務に必要なアプリを自ら開発できるようになれば、エンジニアの採用や教育にかかる時間とコストを抑えることができます。

短時間でアプリを作成して現場に投入できる

AppSheetは、圧倒的に少ない学習時間でアプリ開発を始めて、スピーディーに現場に投入できます。

一般的に、システム開発に必要なプログラミング言語を習得するための学習時間は200〜300時間と言われています。AppSheetは、体系的に学習すれば、20〜30時間である程度アプリを作成できるようになります。通常なら完成まで1ヶ月以上かかりそうな業務システムでも、わずか3日で試作品までできることもあります。

AppSheetは、短期間で開発、スピーディーに現場に投入して改善を繰り返すアジャイル開発に最適なプラットフォームです。非IT人材でも、短期間でデバイス(スマホ、タブレット、PC)に最適化されたアプリを作成できるため、スピーディーに現場に投入することができます。

アプリの作成、更新、公開が簡単にできるため、現場の声を聞いて改修やテストを繰り返すことで、アプリの品質を向上させることができます。アプリの要件や仕様を変更する場合でも、柔軟に対応できるため、アジャイル開発に最適なプラットフォームと言えます。

データベースや外部サービスと連携できる

AppSheetは、さまざまなデータソースや外部サービスと連携することができます。

AppSheetは、新しくアプリを作成する際に、Googleスプレッドシートをデータソースとして使用することが多いですが、既存のデータやデータベースを活用して、アプリを作成することもできます。使用できるデータソースには主に以下のものがあります。

スプレッドシート

GoogleスプレッドシートとMicrosoft Excelが使用できます。

小規模から中規模のアプリにとって、スプレッドシートをデータソースに使用するのが一般的です。AppSheet未経験者や初心者がアプリを作成する場合は、操作が簡単で慣れているスプレッドシートを使用するのがお勧めです。

純正データベース

AppSheetには、AppSheet databasesという純正のデータベースが用意されています。

アプリとの同期がスピーディーで、スプレッドシートよりも大容量のデータまで拡張できる可能性があります。ただし、スプレッドシートほど操作は簡単ではなく、ある程度の学習が必要です。また、2023年末現在では、プランにより制限があり、AppSheet Coreプランでは、1つのデータベースで2500行までしか使用できません。

クラウドデータベース

簡単な設定で、 MySQL 、 PostgreSQL、 MariaDB などの リレーショナルデータベース(RDBMS) にも接続できます。

テーブルあたり10万行を大きく超えるような大容量データを使用する場合は、 Google Cloud SQL や Amazon RDS などのクラウドデータベースも検討します。ただし、クラウドデータベースによって、必ずしもパフォーマンスが向上するとは限らない点に注意が必要です。スプレッドシートでも、設定次第で長く使うことができます。

以上のデータソース以外の外部サービスとも連携することができます。例えば、

  • BoxやDropbox内のMicrosoft Excelをデータソースとして使用する
  • Salesforceにアクセスしてデータソースとして使用する
  • Airtableにアクセスしてデータソースとして使用する
  • Apigeeで外部APIを呼び出し、活用する
  • Odataフィードを提供しているデータにアクセスする
  • Looker Studioに接続して、AppSheetアプリのデータを分析する
  • Google Workspace サービス(ドライブ、カレンダー、フォーム、チャットなど)と連携する

これら外部サービスと連携することにより、アプリの機能や拡張性を向上させることができます。

3. AppSheetの料金

AppSheetのライセンス料金は、Google Workspaceを契約している場合と、契約していない場合で考え方が異なります。

Google Workspaceを契約しておらず、無料のGoogleアカウント(@gmail.com)ででAppSheetを使用する場合は、ライセンスの仕組みについて理解しておく必要があります。

Google Workspaceを契約している場合

Google Workspaceを契約している場合、以下のエディションについては、AppSheet Coreライセンスがデフォルトで含まれています。

  • Business Starter、Standard、Plus
  • Enterprise Standard、Enterprise Plus
  • Frontline Starter、Standard
  • Nonprofits
  • Education Standard

以上のエディションを契約していれば、AppSheet Coreプランを追加料金なしで利用できます。対象は、Businessプラン以上なので、Google Workspaceでドメイン所有権証明済(@gmail.comではない)である必要があります。

AppSheetのEnterpriseプラン(StandardとPlus)については、Google Workspaceには含まれていないため別料金になります。Google Workspaceの管理コンソールから、必要なライセンス数分のサブスクリプションを購入します。

無料のGoogleアカウントの場合

Google Workspaceを契約していない場合は、無料のGoogleアカウント(@gmail.com)で使用することになります。

AppSheetは無料プランのままだとアプリを共有できる人数や機能に制限があります。有料プランを契約するとこのような制限がなくなり、AppSheetのすべての機能にアクセスできるようになります。

有料プラン契約を検討するのは、以下のような場合です。

  • 10人以上のユーザーと共有して、アプリを使用したい
  • 無料プランではアクセスできない機能を使いたい
  • サインインによるユーザー認証やセキュリティフィルタを使用したい

このような場合、有料プランを契約して、アプリを「Deploy」(デプロイ)する必要があります。有料プランは、アクティブユーザーという考え方で必要なライセンスを数えて、サブスクリプションを購入します。

以下のブログ記事では、無料プランと有料プランの違い、どの有料プランが必要か調べる方法、アクティブユーザーの考え方とライセンスの数え方、請求ルールなどを詳しく解説しているので、詳しくは記事を参照してください。

4. アプリ作成事例

AppSheetで具体的にどのようなアプリを作成できるのか、ここでは、AppSheetでできるアプリ事例をいくつか紹介します。

アプリスイートでは、ハンズオンでアプリを作成できるブログ記事を公開しています。以下の5つのアプリについて、実際に手を動かして作ることで、AppSheetを基礎から学習できます。無料で学習できるので、是非チャレンジしてください。

超シンプル版タスク管理アプリ

個人向けのタスク管理アプリです。タスクのステータス管理と期日管理ができます。短時間でAppSheetを体験できるので、未経験者がはじめて作成するアプリとして最適です。

電子名刺アプリ

AppSheetはバーコードやQRコードをスキャンして読み取ることができます。電子名刺アプリでは、アプリ内でVCard形式のQRコードを作成して、それをスキャンして読み取ることで連絡先を追加できます。スキャン体験を目的としたアプリなので、初心者向けです。

タスク管理アプリ

カンバンボードでステータス管理ができる本格的なタスク管理アプリです。タスクに関連するPDFなどのファイルをGoogleドライブにアップロードできる機能もあります。AppSheeetの特徴的な機能であるスライスやアクションの使い方も学べます。初級レベルですが、アプリ作成に必要なスキルをひととおり体験できます。

在庫管理アプリ

バーコードスキャンで商品の入庫、出庫、棚卸を記録し、商品の在庫量を計算できます。在庫量が発注点以下の数量になった時に、AppSheetのAutomation機能を使用してアラートメールを自動で送信します。初級レベルですが、AppSheetらしい「動きのある」アプリを作成できます。

請求書アプリ

Automation機能を使用して請求書をPDFで発行できます。商品の単価や単位を自動で入力したり、明細の金額を合計したりします。請求書、取引先、商品、明細という4つのテーブルを用意して、テーブル間のリレーションシップを設定することで、データベースの基本を学べます。他のアプリにも応用が利く知識やスキルが多く含まれている、中級レベルのアプリです。

 

以上、AppSheetの基礎知識として、特徴、メリット、料金体系について解説しました。
導入を検討される場合は、はじめに本ブログ記事を参照して、AppSheetについて理解を深めていただければ幸いです。

次回(第2回)は、AppSheetで「何ができるのか」について詳しく解説します。

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